「蛍」 なんだかとてもめげる暑い夜 夜風に当たりたくて ふと田圃の畦の中程に行った。 後ろから来る子供達のざわめきに 驚いて振り返ると 目の前には蛍が舞っていた。 気が付くと視界には 光を放って幾重にも 舞い踊る蛍。 子供達の声に気づかなければ 目の前の淡い光さえも 見落とす自分の落ち込みに今更気づく。 蛍を追って後から来るであろう 子供達を待っていたが一向に来ない 見回せば、蛍もいつの間にか居なくなっていた。 あの蛍の光は 落ち込んでいる私に対する 励ましの信号(シグナル)だったのだろうか… 藤次郎正秀